記事公開日
植物工場とは?仕組みや種類、メリット・デメリットを解説

目次
近年、気候変動による農作物の不作や農業従事者の高齢化・後継者不足などを背景に、天候に左右されず安定した生産が可能な「植物工場」が注目を集めています。植物工場は、周囲の環境をコントロールしながら農作物を計画的に生産する施設のことで、従来の農業が抱える課題を解決する手段として、また、地方自治体の地域創生プロジェクトや企業の新規事業・SDGsの取り組みとしても参入事例が増加しています。本記事では、そんな植物工場の基本的な仕組みや種類、導入するメリット・デメリットについて分かりやすく解説します。
植物工場とは
植物工場とは、施設内で光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの生育環境を人工的・高度に制御し、作物を安定的・計画的に栽培する生産システムのことです。天候や季節の影響をほとんど受けずに、年間を通じて一定の品質・収量を確保できるのが特徴です。
従来の農業との違い
従来の農業は、屋外の農地で自然の環境を利用して作物を育てます。太陽の光や雨の恵みを受ける一方で、天候や気温の変化、害虫・病気の発生など、自然環境によるリスクを常に抱えており、土作りや雑草の処理など、人の手による作業も多く発生します。一方、植物工場では閉鎖的または半閉鎖的な空間で環境データを管理しながら栽培を行います。光や温度、水分や栄養素を人工的に管理して育てる点が大きな違いです。季節に関係なく、一年を通して計画的に収穫できます。また、土を使わずに水と肥料だけで育てる水耕栽培が主流となっています。
注目される背景
植物工場が注目を集める背景には、地球規模の気候変動による供給不安と、農業従事者の高齢化に伴う労働力不足という二重の課題が深刻化していることが挙げられます。
天候に左右されない安定生産と、システム化による作業の省力化を同時に実現できる植物工場は、既存の屋外農業が直面する限界を打開するための有力な解決策です。さらに、節水や無農薬栽培によって環境負荷を抑えられる特性がSDGsの理念とも合致するため、単なる栽培技術を超えた「持続可能な食料インフラ」として評価を高めています。
植物工場の種類と仕組み
一口に植物工場と言っても、設備や栽培の方法によっていくつかの種類に分かれます。ここでは、代表的な3つの方式とそれぞれの仕組みを解説します。
完全人工光型
太陽光を一切遮断した完全密閉型の施設内で、LEDや蛍光灯などの人工光源のみを用いて作物を栽培する方式です。空調設備を使って室内の温度や湿度を一定に保ち、二酸化炭素の濃度や養液の量までコンピューターで緻密に制御します。外気の影響を受けにくいため、天候不良による不作のリスクがありません。虫や菌の侵入も防げるため、クリーンな環境で衛生的に育てることができます。レタスなどの葉物野菜の栽培によく使われています。
太陽光利用型
ガラスハウスや高機能プラスチックハウスなどを利用し、主に自然の太陽光で作物を栽培する方式です。太陽光を利用するのが大きな特徴で、そのほかの足りない部分は機械の力で補います。例えば、夏の暑い時期には換気扇や空調を動かし、冬はボイラーで室内を温めます。水やりや肥料の供給も、センサーで培地や養液の状態を感知して自動で行います。
完全な人工環境ほどの緻密な制御はできませんが、自然のエネルギーを活かして効率よく栽培できます。完全人工光型より光熱費を抑えられるメリットがあり、トマトやイチゴ、パプリカなどの果菜類の栽培に多く採用されています。
太陽光・人工光併用型
基本的には太陽光を利用しつつ、人工光を組み合わせて育てる方式です。日照時間が短い冬の季節や悪天候の日には、LED照明などを点灯して光合成を助けます。完全人工光型と太陽光利用型の、両方の良い部分を取り入れたハイブリッドな仕組みです。太陽の光で成長を促しながら、必要なタイミングだけ光を補うことができるため、エネルギーの消費をある程度抑えつつ、収穫量の安定化を図れます。
植物工場のメリット
植物工場を導入・運営することには、従来の農業にはない多くの強みがあります。
天候に左右されない
大きな利点は、季節や天候の変化に影響を受けずに生産を続けられることです。台風や長雨、猛暑といった自然災害のリスクを回避できます。一年を通じて同じ品質の作物を、計画通りに収穫することが可能です。市場価格の変動に影響されず、安定した価格で取引先へと商品を供給できます。欠品のリスクが低いため、長期的な契約を結びやすいという利点もあります。
省スペースで効率的に生産できる
完全人工光型の植物工場では、棚を縦方向に積み重ねる「多段式栽培」が可能です。建物の高さを有効活用できるため、限られた土地面積でも平地の何倍もの収穫量を見込めます。広大な農地がなくても、都市部の空きビルや倉庫などで農業を始めることが可能です。消費地に近い場所で生産すれば、運送にかかる時間やコストも削減できます。土地の確保が難しい地域や、都市部での新規事業としても参入しやすいモデルです。
無農薬栽培や省人化を実現
密閉された空間で栽培するため、外部から害虫や病原菌が侵入するリスクを大幅に減らせます。農薬を使わずに育てることができ、消費者へ安全で安心な食品を提供できます。洗わずにそのまま食べられる野菜として、付加価値をつけることも可能です。また、水やりや温度管理などがシステムで自動化されるため、畑を耕す、長時間炎天下で作業するなどの重労働が少なくなり、農業の経験が浅いスタッフでも作業しやすくなります。少ない人数で効率よく施設を運営できるため、労働力不足の解消につながります。
植物工場のデメリット
メリットが多い一方で、導入前には知っておくべき課題も存在します。ここでは注意すべきデメリットと、それを乗り越えるための工夫や解決策を解説します。
初期費用が高額
施設を建設し、高度な環境制御システムやLED照明を導入するため、多額の初期投資がかかります。設備の規模によっては、数千万円から数億円の予算が必要になるケースもあり、参入のハードルとなっています。この課題を解決するためには、既存の空き倉庫や使われていない工場を再利用する方法があります。ゼロから建物を建てるコストを削減でき、初期費用を抑えて事業を始められます。国や自治体の補助金制度を活用して、資金の負担を軽くする工夫も効果的です。
電気代などランニングコストの負担と赤字リスク
設備の稼働には多くの電力を使用します。特に完全人工光型では、照明や空調を長時間動かすため、毎月の電気代が大きな負担になります。利益を出すためには、この維持費をいかに下げるかが重要です。生産コストが市場の販売価格に見合わず、赤字運営に陥るリスクもあります。
対策としては、省エネ性能に優れた最新の機器を導入することが挙げられます。また、太陽光発電システムを併設して、電力を自給自足する仕組みを作る企業も増えています。施設内の温度を逃がさない断熱改修を行い、冷暖房の効率を上げる方法もあります。
専門知識が必要
植物工場の運営には、植物を育てる知識だけでなく、設備を扱う専門的なスキルが求められます。システムにトラブルが起きた際の対応や、データを分析して栽培環境を改善するノウハウが必要です。自社だけで知見を持たない場合は、人材の育成に時間がかかります。解決策として、システムの提供会社や専門のコンサルタントと連携することをおすすめします。栽培の指導や機器の保守点検など、サポート体制の整ったパートナー企業を選びましょう。外部の力を活用することで、安心して運用を続けられます。
まとめ
植物工場は、天候に影響されずに安全な作物を安定して生産できる新しい仕組みです。狭い土地でも効率よく生産でき、無農薬野菜として高い付加価値をつけられます。食料不足や農業の担い手不足といった課題を解決する手段として、今後さらに需要が高まっていくと予想されます。一方で、初期投資や電気代などの維持費が高くなる側面はあります。また、導入を検討する際は、事業計画の精査とともに、高度なセンシング技術やIoT・自動化システムなどを活用した効率的な運用体制を整備することが重要です。
専門知識を必要とする場合は、外部パートナーに相談するのもおすすめです。事業計画を立てて、自社に合った方式での参入を検討してみてはいかがでしょうか。
植物工場設備のことなら、ぜひご相談ください。
日本ディスプレイセンターは長年の実績とノウハウを基にオリジナル製品の提供から空間のデザインまで手掛けております。お気軽にご相談くださいませ。


