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コラム

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店舗開発における分離発注は本当に得か?什器・家具・サインを分離発注するメリットとは

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はじめに

店舗づくりでは、床・壁・天井などの内装工事に加え、商品を陳列する什器、接客用の家具、店頭や店内のサインなど、多くの要素を整える必要があります。これらを内装工事業者にまとめて依頼する「一括発注」は、窓口を一本化できる便利な方法です。
一方、什器・家具・サインを、それぞれの専門業者へ直接依頼する「分離発注」もあります。分離発注はコストの透明性を高められるだけでなく、専門性を生かして、店舗の品質やブランド表現を向上させやすい発注方法です。
本記事では、発注者側から見た分離発注のメリットと、採用時に押さえておきたいポイントを解説します。

店舗開発で一般的な「一括発注」とは

一括発注とは、内装工事業者が元請となり、内装工事だけでなく、什器・家具・サインなどの手配もまとめて行う方式です。発注者にとっては連絡窓口が一つになり、発注や工程調整の負担を軽減できることが大きなメリットです。工期が短い案件や、社内に店舗開発の担当者が少ない場合には、有効な選択肢となります。
ただし、内装工事業者が什器会社やサイン会社へ再発注する場合、発注経路が長くなることがあります。その結果、管理費や調整費が加算されるほか、誰がどの範囲を、いくらで製作しているのか見えにくくなる可能性があります。
また、設計者から内装工事業者、内装工事業者から専門業者へと指示が伝わる過程で、素材感や細かな納まりなど、デザイン上の意図が十分に共有されないケースにも注意が必要です。

分離発注とは何か

分離発注とは、内装工事とは別に、発注者が什器・家具・サインなどの専門業者と直接契約する方式です。たとえば、床・壁・天井や設備工事は内装工事業者に、商品陳列什器やカウンターは什器専門会社に、店頭サインや誘導表示はサイン専門会社に依頼します。
すべてを細かく分ける必要はありません。ブランド表現やコストへの影響が大きい特注什器だけを分離する、あるいは複数店舗で共通利用する家具やサインだけを本部から直接発注する方法もあります。
つまり分離発注は、一括発注か完全分離かという二者択一ではありません。案件の規模、社内体制、品質目標に応じて、発注範囲を設計する考え方です。

メリット① コストの透明化と適正価格の実現

分離発注では、発注者が専門業者から直接見積書を受け取るため、材料費、製作費、施工費、運搬費などの内訳を確認しやすくなります。複数社の見積条件をそろえれば、価格の妥当性も比較しやすくなるでしょう。
また、内装工事業者を経由した再発注で発生する管理費や中間マージンを抑えられる可能性があります。ただし、減らせるのは単純な上乗せ分だけではありません。専門業者から、製作方法の見直し、材料の共通化、寸法の規格化などの提案を直接受けられるため、仕様そのものを合理化できる点も重要です。

総工費を5〜15%程度最適化できるケースとは

ここで、条件を単純化したモデルケースを考えてみます。
総工費4,000万円の店舗で、内装工事が2,500万円、什器・家具が1,000万円、サインが500万円だったとします。什器・家具・サインの計1,500万円を専門業者へ直接発注し、再発注に伴う管理費の整理、素材の共通化、製作寸法の見直しによって300万円を削減できれば、総工費に対する最適化率は7.5%です。
さらに、多店舗分をまとめて製作して500万円を抑えられれば、総工費に対して12.5%の最適化となります。このように、什器やサインの比率が高い案件、特注品が多い案件、複数店舗を同時展開する案件では、結果として総工費の5〜15%程度の最適化につながる場合があります。
ただし、これはあくまで考え方を示す試算です。実際の効果は、工事区分、既存の見積条件、発注量、仕様、物流、施工場所、発注者側の管理体制によって異なります。また、安価な業者への切り替えだけで同様の効果が得られるわけではありません。

メリット② 品質を専門分野ごとに最大化できる

什器、家具、サインには、それぞれ異なる技術が必要です。
什器では、商品の重量や陳列方法を考慮した構造、日常の清掃やレイアウト変更への対応が求められます。家具では、木材や金属、化粧板などを組み合わせる加工技術と、手に触れる部分の仕上げ精度が重要です。サインでは、視認距離、照明、電気配線、屋外耐候性、各種表示ルールなどを検討しなければなりません。
分離発注によって各分野の専門業者を選べば、用途に適した材料や製作方法を採用しやすくなります。初期費用だけでなく、耐久性、清掃性、交換のしやすさまで含めて品質を判断できるため、長期的な費用対効果の向上にもつながります。

メリット③ デザインの再現性が高まる

店舗空間では、数ミリの見付け幅、木目の方向、塗装の艶、照明の色温度といった細部が、全体の印象を左右します。
発注者や設計者が専門業者と直接打ち合わせを行えば、完成イメージや設計意図を共有しやすくなります。素材サンプル、試作品、製作図を確認しながら調整できるため、「図面どおりではあるが、イメージとは違う」という行き違いを減らせます。
特に、ブランド独自の什器や象徴的なカウンター、ファサードサインは、顧客が店舗を記憶する重要な要素です。専門業者との直接的なコミュニケーションは、ブランドイメージを空間に落とし込むうえで大きな効果を発揮します。

メリット④ VE提案の幅が広がる

VEとは、必要な機能や品質を維持しながら、仕様や製作方法を見直してコストを最適化する考え方です。
什器専門会社であれば、外観をほとんど変えずに下地材を変更する、複数の什器で部材を共通化する、工場での組立比率を高めて現場作業を減らすといった提案ができます。サイン専門会社であれば、表示面の交換方法やLEDの配置を工夫し、将来の改装費や維持費を抑える提案が可能です。
発注者が専門業者と直接協議できれば、単なる値引きではなく、「どの品質を守り、どの仕様を合理化するか」を選択できます。この判断のしやすさが、分離発注の大きなメリットです。

メリット⑤ 維持管理と追加出店がしやすい

店舗は、開業して終わりではありません。使用中の傷や破損への対応、商品の入れ替えに伴う什器の変更、サイン表示の更新などが継続的に発生します。
専門業者と直接取引していれば、製作図、使用材料、塗装色、金物などの情報を継続して管理しやすくなります。同じ業者へ補修部材や追加什器を依頼できるため、色や寸法の違いも防ぎやすくなるでしょう。
多店舗展開では、標準什器の仕様を専門業者と共有し、店舗ごとの差分だけを調整する方法が有効です。店舗ごとにゼロから見積もる必要が減り、品質の均一化、製作期間の短縮、量産効果によるコスト最適化も期待できます。

分離発注を成功させるためのポイント

分離発注では、発注者側の調整範囲が増えます。特に重要なのが、工事区分の明確化です。
たとえば、家具に組み込むコンセントは誰が用意するのか、サイン用の電源工事はどこまで内装工事に含むのか、什器の搬入と固定は誰が担当するのかを事前に決めておく必要があります。区分が曖昧なまま進めると、工事の抜けや追加費用、工程の遅延につながります。
成功のためには、次の点を明文化しておくことが有効です。
  • 業者ごとの設計・製作・施工範囲
  • 現場採寸と製作図承認の担当者
  • 電気、下地、補強などの取り合い
  • 搬入経路、搬入時間、養生の条件
  • 現場工程を統括する責任者
  • 検査、不具合対応、保証の窓口
発注者に十分な管理体制がない場合は、設計者やプロジェクトマネージャーに調整を依頼する方法もあります。分離発注で削減できる費用と、追加で必要になる管理工数を合わせて比較することが大切です。

分離発注が特に効果を発揮するケース

分離発注は、次のような案件と相性が良い傾向があります。
  • 独自の世界観やブランド表現を重視する店舗
  • 特注什器やオーダー家具の比率が高い店舗
  • 高い仕上げ品質が求められる高級業態
  • 商品変更に合わせて什器を更新する店舗
  • 複数店舗で共通仕様を展開するチェーン
  • サインやデジタルサイネージを積極的に活用する店舗
一方、小規模で仕様が標準的な店舗や、極端に工期が短い案件では、一括発注のほうが効率的な場合もあります。発注方式は、価格だけではなく、品質、工程、社内の管理負担、開業後の運用まで含めて選ぶ必要があります。

まとめ:「専門性への直接投資」が店舗価値を高める

 

什器・家具・サインの分離発注は、単なる中間マージン削減の手法ではありません。専門業者の知識を設計や仕様決定の段階から活用し、必要な部分へ適切に予算を配分するための発注方法です。
条件が合えば、総工費の5〜15%程度のコスト最適化につながる可能性があります。ただし、本質的な価値は、最安値を実現することではなく、価格の透明性を高め、品質とコストのバランスを発注者自身が判断できる点にあります。
一括発注の管理しやすさを生かしながら、ブランドを象徴する什器や家具、サインだけを分離する方法も有効です。店舗の目的や社内体制に合った発注範囲を設計することが、空間品質の向上と、長期的な投資効果につながります。

 

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